2015/06/04

第22回 マンネリによる 「ペナルティ」 の機能不全に注意

運送会社専門のコンサルタントとして活躍する「あいち経営コンサルタント」の和田康宏氏。コンサルタント実績は300社を超え、多くの社長・ドライバー・管理職と接してきたその実績はどんなコンサルタントよりも中身が濃いと評判だ

 

「やっぱり点呼は大事だね。法律で義務だからとかは関係ないよ。」

ある社長さんの言葉です。

その事業者さんには小さい物損事故を何回も起こすドライバーがいました。社内規則では、

物損事故を起こしたドライバーに対して、安全手当を数ヶ月間停止する、というペナルテ

ィーが科される仕組みとなっていました。

社内規定により、度重なる物損事故でそのドライバーはペナルティー期間が長くなっていた

のです。普通に考えれば信賞必罰、自分のミスで事故を起こしたのですから、安全手当が減

額もしくはカットされても仕方ありません。ですが、この社長さんは違っていました。

何が違っていたのか?

それは安全手当カットを1ヶ月のみにし、事故原因と再発防止策をドライバー全員で一緒に

考えることに社内規則を変更したのです。

逆に処分規定を緩くしたのです。社内規定を緩くする決断をする上で重要だったのが社長さん

自身が行っている早朝の対面点呼なのです。対面点呼でそのドライバーと会話を交わす中で、

社長さんは気づいたのです。

何度もペナルティーを科された人間の心理に・・・。

 

「ペナルティー」というのは、人間に対して不快な経験(手当、賞与のカット、不支給など)

をさせることで、二度と同じ過ちをしないようにする、との考えから行われるものです。

ところが、実はココに盲点があったのです。

「マンネリ」という盲点です。

罰は最初のうちは効き目があります。ところが、何回か経験していると慣れてしまうのです。

もう2回も事故をやって安全手当をカットされているんだから、今更3回やっても4回やって

も同じだと・・・。

マンネリによる機能不全。これがペナルティーによる事故抑制の限界であり盲点なのです。こ

の事実に社長さんは、実際に早朝対面点呼をして、毎日そのドライバーと会話などのコミュニ

ケーションを積み重ねていく中で気づいたのです。

 

考えたあげく社長さんの決断。それが安全手当カットを1ヶ月のみにし、事故原因と再発防止

策をドライバー全員で一緒に考えるという仕組みにすることでした。驚くことに、あれだけ物

損事故が多かったドライバーが、それ以降、すっかりなくなったのです。

「事件は現場で起こっている!」はドラマだけの話ではありません。対面点呼とはよくいった

のもので、やはり面と向かっていなければ気づけないことはたくさんあります。社長自身が対

面点呼を実施するのは大手事業者では無理でしょう。

しかし、中小事業者ならできます。毎日とはいいませんが、ドライバーの重要なシグナルを見

逃さないためにも、ひょっとしたら、いや間違いなく、時々社長さんがやってみるのは意味が

あります。

逆にいえば、管理者では気づけないことがある、ということです。

 

やはり最後は社長さん。

明日あたり、早朝の対面点呼を実施してみてはいかがでしょうか?

今まで見えていなかったことに気づくことができるかもしれませんね。

 

2014.10.8


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