2014/12/16

和田康宏の「転ばぬ先の知恵」Vol.16

運送会社専門のコンサルタントとして活躍する「あいち経営コンサルタント」の和田康宏氏。コンサルタント実績は300社を超え、多くの社長・ドライバー・管理職と接してきたその実績はどんなコンサルタントよりも中身が濃いと評判だ

 

今月7月1日に中部運輸局は静岡の運送事業者に対して

全国初の「60日間の営業停止」処分を行いました。

主な法令違反は

「名義貸し」と「整備管理者の不在」の2つです。

すでに警察の強制捜査も行われていますので、ご存知の方も多いと思います。

それぞれの違反ごとに「30日間の営業停止」のため

合計60日間の営業停止になりました。

今年1月からスタートした行政処分基準に基づき行われました。

それにしても「名義貸し」行為とは、一体どのようなことをいうのでしょうか?

分かっているようで分かっていないのが、この名義貸しの定義です。

名義貸し行為の判断基準は主に5つあります。

具体的には

(1)雇用関係 

(2)経理処理関係

(3)運行管理関係

(4)車両管理関係

(5)事故処理関係

の5つです。

この5つのうち、更に特に重要な判断要素となるのが

(1)雇用関係と(2)経理処理関係です。

それでは順番に確認していきます。

 

まず(1)雇用関係についてです。

イ.ドライバーと雇用(又は派遣)契約を結んでいない。

ロ.ドライバーについて、固定給または保障給などの一定の保障された給与の

支払いをしていない。(つまり、歩合給の割合が大部分を占めているような給与体系のこと)

ハ.ドライバーについて、社会保険料や雇用保険料、源泉徴収が行われていない。

ニ.就業規則が定められていない。(従業員10名未満は除く)

この4点について実態を確認されることになります。

すべてに該当しなくて名義貸しと判断されるケースは当然あります。

特に分かりやすいのが

イのドライバーとの雇用契約(又は派遣契約)とハの社会保険、雇用保険、源泉徴収ですね。

どちらにしても、監査が行われた場合に雇用契約書や賃金台帳などですぐにバレてしまいます。

 

次に(2)の経理処理関係についてです。

イ.乗務における運賃収入の全額が売上に計上されていない。

本来の許可事業者の売上に計上されていない運賃収入は、ドライバーが

直接受け取っている可能性が高いです。ということは、自己の計算で事業を行っていると考えられ、

名義貸し(ドライバーからすると名義借り)に該当する可能性が高くなります。

 

ロ.名義貸しをしている事業者の費用の一部がドライバーの事業所得に該当すると認められる

支払いに当てられている。

これは許可事業者からドライバーへの支払いが給与ではなく、請負費や委託費等で支払われている場合に、

ドライバーをトラック事業の事業主として認識していることを示すもの重要な要素となります。

さらに、ドライバーが事業所得として確定申告している場合には名義貸し行為を裏付ける強力な証拠となります。

 

ハ.駐車場代、トラックの諸経費(燃料代、保険代、修理代など)を許可事業者が負担していない。

これは、表向きは許可事業者が支払っていても、最終的にはドライバーがその費用を徴収している

場合は、単なる「立て替え」をしているだけです。そのため、この基準に該当する可能性が高くなります。

 

まだまだ、名義貸しに近い行為を行っているという情報が私の耳にも入ってきます。

特に古株のドライバーに対して、事実上名義貸しに近い方法で長年続けてきたため、

今更変えられないとの話も聞きます。お気持ちは良く分かりますが今回の大変厳しい

行政処分の事実を直視することが経営者としては重要です。

情に流されずに、適切な判断をすること。

いま、経営者のこの資質が強く問われています。

 

2014.7.9


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