運送会社専門のコンサルタントとして活躍する「あいち経営コンサルタント」の和田康宏氏。コンサルタント実績は300社を超え、多くの社長・ドライバー・管理職と接してきたその実績はどんなコンサルタントよりも中身が濃いと評判だ
ドライバーに対する安全教育。
分かっているけどできない、という事業者さんも多いのではないでしょうか?
ところで、この「安全教育」。その内容は、エコドライブや日常点検、外部講師
を招いての講話等々、実にさまざまです。しかし、忘れてはいけないのは“法
令上の”安全教育です。
ドライバーに対する安全教育メニューは法令で定められています。
ご存知の方も多いかと思いますが、次の11項目です。
1)トラックを運転する場合の心構え
2)トラックの運行の安全を確保するために遵守すべき基本的事項
3)トラックの構造上の特性
4)貨物の正しい積載方法
5)過積載の危険性
6)危険物を運搬する場合に留意すべき事項(輸送する場合のみ)
7)適切な運行の経路及び当該経路における道路及び交通の状況
8)危険の予測及び回避
9)運転者の運転適性に応じた安全運転
10)交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因及びこれらへの対処方法
11)健康管理の重要性
上記11項目を何%実施していたか、で行政処分が決まります。
50%以上実施していれば、初回違反は「警告」。50%未満しか実施していな
ければ、初回違反で「10日の車両停止」です。忙しい中、ドライバーの仕事を
止めてまで行うわりには、たいした行政処分ではない、と思う方も多いのでは
ないでしょうか。
改正前の行政処分基準(2013年10月まで)では「60日の車両停止」だったこ
とを考えると、6分の1に処分が軽くなっているので尚更です。
しかしながら、実はココが盲点になるのです。
「なんだ、安全教育に力を入れてもあまり意味がないな」
そう思ってしまうからです。でも、それは大きな間違いなのです。
“悪質違反”をした時に、状況が大きく変わるのです。安全教育をしていたかどうか。
このことだけで、天と地の開きが出るのです。
まず「悪質違反」とはどんな違反のことでしょうか?
主な悪質違反としては、
・飲酒運転
・過労運転
・ひき逃げ
・無免許運転
・スピード違反(一般道30km/h、高速道40km/h)
の5つがあります。
5つの悪質違反で重大事故を起こした場合、原則、3日あるいは7日の営業停止
処分になるのです。
ただ、営業停止処分になるには、もう少し条件があります。公安委員会が国土交
通省に通知をし、この通知を受けて国土交通省が監査をした結果、「悪質違反の
防止のための指導、監督を明らかに実施していなかった場合」という条件です。
それでも「えっ!」と思う方もいるでしょう。
悪質違反(過労運転を除く)をしたのはドライバーが悪いのであって会社は悪くない
じゃないか、と。
確かにそうです。しかし、運送会社側にも責任がある、ということなのです。
悪質違反を防止するための「安全教育」という責任です。ですから、逆に言えば、5つ
の悪質違反防止のための「安全教育」をしていた証拠があれば、悪質違反だけを理由
とした営業停止処分にはならないのです。
「安全教育」恐るべし!です。
果たして、いま自社で5つの悪質違反を伴う重大事故が起きた時、事故前に予防の
ための安全教育をしていたことを証明する資料(紙)はあるでしょうか?
安全教育記録という「紙」ですが、いざ監査の時には「神」にみえることでしょう。
営業停止になるかどうかは、まさに「紙一重」ですね。
2014.8.27