監査方針及び行政処分の基準の改正によって、「運行管理者未選任」、「整備管理者未選任」、
「全運転者に対する点呼未実施」、「監査拒否、虚偽の陳述」、「名義貸し、事業の貸渡し」、
「乗務時間の基準に著しく違反」、「全ての車両の定期点検整備が未実施」の7項目の違反に
ついては事業停止30日という厳しい処分が科されることとなり、すでに全国で30日間の事
業停止事案が発生している。この実質的な処分強化や人手不足問題など複合的な要因によって
今後淘汰が進むことも予想されるトラック運送業界だが、そうした中で自らを律しかつ互いを
刺激し合う組織、また、仲間でコンプライアンスを目指す組織、そしてシステムを有効活用す
ることで処分とは無縁の企業づくりを目指す企業がある。それぞれの取り組みを取材した。
昨年10月に発足した一般社団法人トラック・マネジメント協会(瀬尾国大会長)。”誰でも入れ
ない協会”を標榜しており、入会条件は厳しい。4社でスタートし、ことし2月から今後の活動方
針について議論してきた。そして今月から始めたのが「会員企業へ訪問してのコンプライアンス
チェック(模擬監査)」だ。
4月14日、会員各者が㈲ヤマコン(山田享社長、愛知県小牧市)に集まった。16時にスタート
した模擬監査。点呼簿や運転日報など書類のチェックから帰社したドライバーへのインタビュー、
そして対面点呼のチェックなどを行った。
時間の都合上すべての法令順守項目のチェックはできなかったものの、特に重要な労働時間(拘束
時間や休息期間など)や点呼の実施状況を重点的に行い、改善点のアドバイスも行った。終了時間
は18時30分。2時間半の長丁場だったが、活発な意見交換でお互いが刺激し合っているせい
か、あっという間に時間が過ぎた印象だ。
同協会の和田康宏理事長は「普段、監査の時や巡回指導の際はなかなか本音で相談できないことが
多いが、ここでは上手くできていないことを気兼ねなく相談したり、アドバイスをもらったりでき
る。また、相互監査なので監査する側も勉強になる」とメリットを説明する。
監査を受けた山田社長は「Gマークの更新申請を控えているのでいい予行演習になった。指摘され
た点を直し、より良い状態で巡回指導や通常監査に臨むことができる」と述べた。
和田理事長は、「いかに優秀なドライバーを確保できる仕組みを作ることができるか?、いかに優
秀なドライバーを育成できる仕組みを作ることができるか?、いかに優秀なドライバーを定着でき
る仕組みを作ることができるか?、この3つの仕組み作りが最重要課題で、これらができれば、同
業他社との差別化が図れ、自ずと荷主から指名される会社になる。当協会はそうした仕組みづくり
を目指している」と力を込める。法令順守はそうした仕組みづくりのための条件の一つである。
トラック団地でコンプライアンス実現目指す
静岡県の運送会社、静北運輸㈱(静岡市葵区)の杉山節雄
社長は、仲間の4社とともに昨年10月に静岡市物流団地協同組合(杉山理事長)を設立した。
目的は燃料購入やETC事業など共同化によるメリットを得るだけでなく、受委託による24
時間点呼や労務管理の共同化、ナスバネット活用など1社だけでは実施が難しいコンプライア
ンスの徹底を目指すためだ。
物流団地を建設し、5社すべてが団地へ移転する。杉山理事長は「これができれば業界は良く
なり人材も入ってくる。今後5年間で運送会社が法律を守れるようなモデルケースにしていき
たい」と意気込みを語る。
デジタコと労務管理ソフトの組み合わせで法令順守
㈱ランドキャリー(森部鐘弘社長、愛知県春日井市)は、法令順守体制を徹底するため拘束時間や
連続運転時間などをリアルタイムに把握できるようデジタコとドラレコ、そして労務管理ソフトを
刷新した。ドライバーの労働時間をデジタコでチェックし、1か月の最大拘束時間293時間から
日々減じていくシステムで、オーバーしそうになると警告する。
150台のトラックに装着したデジタコはすべて矢崎製。森部社長によると「信頼で選んだ。以前
に比べ格段に性能がアップしている」と驚く。
これまでは日報から人の手で労働時間をチェックしており見落としなどがあったが、この運行管理
システムによって、労働時間の調整ができるようになったことは大きいという。
河村敏彦常務は「コンプライアンスなしに企業は存続できない時代。ここから成長していきたい」
と話す。
2015.4.22