2015/02/09

第18回 和田康宏の「転ばぬ先の知恵」

運送会社専門のコンサルタントとして活躍する「あいち経営コンサルタント」の和田康宏氏。コンサルタント実績は300社を超え、多くの社長・ドライバー・管理職と接してきたその実績はどんなコンサルタントよりも中身が濃いと評判だ

 

「“ひき逃げ”なんてドライバー個人の責任でしょ」

ある運送会社の社長さんと雑談をしていた時の会話です。

最近、時々ニュースで数百メートル以上にわたって人を引きずった車がそのまま逃走した、と

いうひき逃げ事件を耳にすることがあります。一般人のひき逃げであれば、その人個人の責

任ですみます。ところが、緑ナンバーのトラックの場合はそんなに単純な話ではなくなります。

通常、緑ナンバーのトラックでひき逃げ(救護義務違反)をすると、公安委員会から国土交通省

にその旨の通知がされます。

公安委員会から通知を受けた国土交通省は、ひき逃げをしたドライバーが所属する運送事業

者の営業所に対して監査に入ります。いわゆる“抜き打ち”監査ですので、通知なしで、ある日

突然やってきます。その監査で何をチェックされるのでしょうか?ココが一番のポイントになりま

す。行政処分基準には次のような規定があります。(表現を若干変更しています)

「事業用自動車の運転者が救護義務違反をし、公安委員会がその旨を国土交通省に通知し、

国土交通省が運送事業者を監査した結果、救護義務に関する指導監督を明らかに実施してい

なかった場合、7日間(又は3日間)の営業停止処分にする」

何かの聞き間違いではないか、と驚かれた方もいるかもしれません。

実は、ひき逃げはドライバー個人の問題だけではなく、運送事業者の責任でもあるのです。

最悪、運送会社が営業停止になることもあるのです。

でも、まだ慌てないで下さい。先ほどの行政処分基準を冷静に読むと大切なことが分かります。

「救護義務に関する指導監督を明らかに実施していない場合」という点です。つまり、国土交通

省は、ひき逃げをしてしまったことは悪いことではあるが、ひき逃げ事件以前に運送事業者とし

てひき逃げ防止のための努力(指導監督)をしていた場合には営業停止処分にはしない」

そのように書いてあるのです。

では、ひき逃げ防止の指導監督とはどのような内容になるのでしょうか?

例えば、ひき逃げをした場合の運転免許はどうなってしまうのか?

運転免許は何年で再取得できるのか?

実際に人身事故を起こした場合の正しい対処の方法は?

このような内容を何回も繰り返し教育していく必要があります。

また、なぜ、ひき逃げをしてしまうのか?

人間心理についてドライバー同士で話し合いをさせることも効果的な教育になります。

2014年に愛知県で発生したひき逃げ事件。

400m以上も被害者を引きずったあげくの逃走。今回のひき逃げをしたドライバーは白

ナンバーのダンプでした。しかし、これが、もし緑ナンバーのドライバーだったら・・・。

そう考えることが、まさかの坂に出くわさずにすむための第一歩。

まさかウチのドライバーに限って・・!

こうならないための、日頃のひき逃げ防止のための指導監督。絶対に押さえておきたい

取り組み事項ですね。

 

2014.8.13

 


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