「強いだけのチームはつくらない」。
中田商事(三重県伊賀市)社長の中田純一さんは、組織の在り方についてこのように語る。
会社以外にも8年前にNPO法人スポーツクラブどんぐりを設立、「アヴェニーダソル」という
フットボールクラブを運営している。そのジュニアユースの一期生だった息子の永一さんは、
ことしの全国高校サッカー選手権大会で地元の名門四日市中央工業高校のメンバーとして
出場。2年生ながらレギュラーとして活躍した。中でも準決勝の富山第一戦では1点を
追いかける前半終了間際に得たフリーキックでおよそ25メートルの距離から直接ゴールを
決めてみせた。もともとサッカーファミリーとして有名な中田家。中田さんの弟の一三さんは、
中西永輔や小倉隆史と同級生で「四中工三羽烏」と呼ばれた。
全国高校サッカー選手権大会にも2年連続で出場し、3年時の1992年1月に行われた大会では
同校初の選手権優勝をもたらし、一三さん自身も優秀選手に選出された。また、中田さんの
甥っ子の川本将太郎さんも3年前に右SBとして活躍し、全国準優勝を勝ち取るなど、まさに
”伝説の血”。
永一さんが今回、全国3位という栄誉を持ち帰っても「親類はまったく祝賀ムードではなかった。
むしろ祖母からは「もっと頑張らなきゃダメよ」と言われたというから少し気の毒ではある。
ただ、永一さんは先の2人のように1年時からすでにレギュラーとして活躍していたわけではなく、
中田氏が設立したクラブチームでじっくり練習を積み重ね成長してきた努力型の素材だという。
そのクラブチームのモットーが先に述べた「強いだけのチームづくりを目的としていない」だ。
中田さんは「20年後、30年後に社会に求められる人材を育成することが目的。個々それぞれが
常に“もう1歩前へ”進む努力をする強い精神力と継続する忍耐力を身につけ、感謝し、
輪を大切にできる人間になることを求めており、サッカーは一つのツールに過ぎない」と述べる。
それは目先の結果だけにこだわらない自社の人材育成にも通じる部分だという。
永一さんはそうした理念をベースに来年、チームのキャプテンとして”もう一歩先”を目指す。
2014.2.26