「いざという時のために柱は10本も20本も持っている」。こう笑顔で話すのは柴山通商
(岐阜県各務原市)社長の山田幸也さんだ。リーマンショックで自動車産業が大打撃を
受けた際にも、また、大震災やタイの洪水などの影響もまったくと言っていいほどなかっ
たという。「特定の荷主に比重を置くとどうしても運命共同体となる。周囲はらはトヨタが
傾くわけがないだろうと言われたが、そう言っていた運送会社は先のリーマンショックで
物量が7割減り皆消えていった」。同社では自動車関連の仕事を扱っていないが「メー
ンの仕事がなければ他の仕事を探せばいいこと。ウチはずっとそうしてきた」と言い切る。
そんな山田さんのモットーは“どんな仕事も断らずに一生懸命すること”だという。そうした
姿勢が「できる限り仕事を選ばない」という自社のブランドを築き上げてきた。「手積みが
嫌だとか、待機時間が長いから嫌だとか、不満をあげればキリがない。効率の悪い仕事
でもどうすれば利益が出るか、荷主への提案も含めて考えていることが売上アップにつな
がっているのだと思う」と話す。これまで一度も営業をしたことがないと話す山田さんだが、
信頼関係を築いている同業者によるクチコミで荷物が集まってくるという。そんな同社だが、
経営をする中で最近はこれまでに経験したことのないほど”妙な空気”を感じている。昨年
来、人手不足は叫ばれており、仕事はあるが人やトラックがない状況が続いていた。それ
が最近では「人もトラックも足りないが、荷動きも間違いなく鈍っている」という。消費税の
増税による個人消費の落ち込みが理由だと推測する。バランスが取れていると思いきや
そうではないらしい。仕事があるところとまったくないところの格差が広がっているのを感じ
ている。先の読めない時代で、これから勝ち組に入るためには人材教育が大切だと話す
山田さん。ただ、一から教育する余裕があるわけでもない。「ドライバーは運転免許があれ
ば誰でもなれる。しかし、プロドライバーとして雇おうと思うとどうしてもハードルが高くなって
しまう。我々中小企業は、不足する人材の中でも素質のある人材を厳しい目で見極めてい
く必要がある」と今後の課題を話す。
2014.11.26