食品輸送を手がける㈱第一名誠(瀬尾誠社長、名古屋市港区)。専務取締役の瀬尾国大さん
は、企業の規模ではなく質を重視する。数年前、コンプライアンス重視のため大半の荷主に対
し運賃値上げと業務内容の改善を求めた。撤退・売上減も覚悟の上で交渉に臨み、「実際に売
上比率の大きいお客様もお断りした」という。しかし、次の仕事があるわけでもなく契約満了ま
での数か月間はこの先どうしようかと悩んだ。そんな切羽詰まった状況が3回ほどあったが「
不思議とすべて新しい仕事が見つかった」。結局、条件改善だけでなく売上も大幅に増加した。
「結果オーライだった」と笑う瀬尾さんだが、リスクを負ってまで交渉する理由は、労働環境が
悪ければ良いドライバーが辞め、質の悪いドライバーが入ってくる。そして会社のレベルが低
下するという悪循環に陥ってしまうからだ。自身も20代をトラックに乗って過ごした。創業間もな
い頃から父親の社長と共に会社を拡大させてきただけに、過酷な労働も経験してきた。「遊び
たい盛りなのに自分の時間がない。常に辞めたいと思っていた」。だからこそ基盤ができた現
在は、少しでも良い労働環境を提供したい。瀬尾さんは、常にドライバー目線にこだわる。例え
ば、現在も常に作業着で、時間があれば現場に出向く。「ドライバーと接することで、抱える悩み
や不平・不満が自然と耳に入る。それが早期解決にもつながり、結果的にドライバーの質向上
にもつながる」。さらに、周囲から格好良く見られるよう制服デザインを一新し今月から配布す
る。「お客様に少々無理なお願いをしても受け入れてもらえるのはドライバーの質が高いから」
と感謝する瀬尾さんは、待遇面でドライバーに応える。同社では洗車1回につき2500円の洗車
手当がつく。週1回で月1万円が手に入る。「綺麗な車両に事故はない」という安全への思いか
らだ。そして今年は全員に一律2万円の賃上げを行った。デジタコの入力操作を正確にするこ
と(1万円)と運行前点検とは別に独自の車両点検表を記録簿に記入する(1万円)という条件こ
そあるが、これはごく日常業務の一環でハードルは低い。その他、無事故奨励手当を含め年に
3回の賞与も支払っている同社は驚くほど離職率が低い。瀬尾さんの目標は「ダントツの質と待
遇でドライバーが”辞めない・入(はい)れない”会社にすること」だという。
2014.11.12