2015/02/03

人手不足どこ吹く風

人手不足が深刻化しているトラック運送業界だが、名備運輸(愛知県小牧市)社長の丸川靖彦

さんは「おかげさまでまったく困っていない」と話す。「人にやさしい物流」を掲げる同社は、その

職場環境がクチコミで広がり、募集広告を出さなくてもドライバーが知人を紹介してくれるのだ

という。そんな同社にも10年ほど前までは人の出入りが激しかったという。「少子高齢化でこの

先人手不足になることは分かっていた。今から手を打たなければ大変なことになる」と考えてい

た。なぜ人が離れるのか、どうすれば人材が定着するのか悩んでいた時期にある人物と出会

う。丸川さんはその人物に「自社の経営を良くするためには、まずお客様が良くならなければな

らない。そして、地域が良くならなければならない。自分たちだけが良くなろうとしてはダメだ」と

利他の精神を教えられた。その後トラックを人や地域とのつながりをイメージしたデザインに一

新。そして従業員を前に「必ずどこよりも働きやすく、ドライバーという仕事を誇れるような職場に

してみせる」と宣言した。その後、門型洗車機の導入や洗練されたデザインのユニフォームの支

給など矢継ぎ早に職場環境を「進化」させていく。リーマンショックでは大きな打撃を受けたが、

一人も解雇しなかった。また、従業員や取引先との絆も深めていった。小牧市が開催する駅伝

に毎年、荷主とともにエントリーし、皆でタスキをリレーする。クリスマスシーズンには、遅くに戻

ってくるドライバーに安らいでもらおうと社屋にイルミネーションを施し、クリスマスには自らサン

タクロースの姿に扮し、仕事から返ってきたドライバーや来客にケーキを振舞う。こうした「思い」

が花開き、人手不足に苦しむこともなく経営にまい進することができるのだ。「これからも顧客

に、そして従業員や家族に安心を与えられる物流企業を目指したい」と丸川さんは話す。

 

2014.10.8