寝坊して延着したドライバーに思わず「延着でよかったな」と声をかけていた。
森川運輸(名古屋市南区)社長の森川武敏さんは、先日起こった電話での一コマを
「コンプライアンス時代ならでは」と振り返る。
大阪で前日の夜トレーラに鋼材を積み、翌朝6時に愛知県の荷主に届ける運行。
しかしドライバーは途中、奈良で休憩・仮眠したまま6時過ぎまで寝過ごしてしまった。
慌てて社長に事情説明の連絡をしたという。
「10年前なら『何やってんだバカヤロー』と怒鳴る場面。しかし連絡を受けてホッしたという
のが正直な気持ちだった」という。口をついて出た言葉が「居眠り運転で事故を起こさなくて
よかったな」だった。
もともとコンプライアンス意識が高い森川さんは、グリーン経営の認証も早くから取得。
「ウチのような30台程度の規模なら自分一人で十分」と、なんと社長自身が事務局と
なり取得にこぎ着けた。途中、分からないことがあれば顧問で運送専門のコンサルタントを
手がけるあいち経営コンサルタントの和田康宏氏にアドバイスを仰いだ。
和田氏は、「とても勉強熱心で意欲的だったので認証取得に不安はなかった」と振り返る。
コンプライアンス問題について「いちばん変わらなければいけなかったのは経営者の頭。
だから自分で認証の勉強しようと思った」と話す森川さん。人材不足や軽油価格高騰など
経営環境が急激に厳しさを増す中で、これまで以上に会社の舵取りを真剣に考える必要が
あるからだ。
全車にデジタコ装着はもちろん和田氏とともにドライバーの教育にも力を入れてきた。
「全国6万社の中で勝ち抜くにはコンプライアンスが何より大切。延着なら荷主に誠心誠意
謝罪すればいい。そこで無理をして重大事故を起こせば会社がなくなってしまう時代だ。
延着で本当によかった」と話す。
2014.7.23