栄光陸運㈱(愛知県碧南市)社長の鈴木栄子さんは、
時候のあいさつや招待の御礼など、折に触れて取引先や
友人などに直筆のファクスを送ってきた。
今年は趣向を変えて A 4用紙に趣味の油絵に直筆のメッセージを
添えてラミネート加工したうえで取引先などに届けている。
「ハガキを送ってもダイレクトメールなどと一緒に捨てられてしまう可能性が
あるが、これであれば目立つ上に心を込めて書いているので相手もしっかり
読んでくれる」とその理由を話す。
そんな筆まめな鈴木さんだが、女性ならではの細やかな心配りに感銘を
受けて「一服の清涼剤をありがとう」とすぐさまお礼の電話をしてくる相手も
少なくないという。
同社の発足は平成5年1月。離婚を機にそれまで働いてきた運送会社を離れ、
新たに栄光陸運を設立した。創業当時は人もトラックもなく文字通り「ゼロ」からの
スタートだったというが、持ち前の熱意と責任感で、次第に人も仕事も集まってきた。
ビジネスよりも「心」を大切にするという鈴木さんの経営哲学は荷主からの信頼を獲得し、
現在車両数約 80 台、売上高 10 億円を超える地域屈指の物流企業にまで育て上げた。
「私たちの強さはバブルのいい時代を経験していないこと。失われた 20 年をこうして
生き抜き成長を続けてきたことは大きな財産だ」と語る鈴木さん。
燃料価格の高騰や人材不足など業界を取り巻く環境は非常に厳しく、もちろん同社に
とっても例外ではないが、「こんな厳しい時代だからこそ心のつながりを大切にしていきたい」
と話す。
趣味の油絵は写実ではなく鈴木さんの想像を交えながら描く部分が多々含まれるという。
「私の絵は描いていくうちに進化していくの。全体のバランスを考えて足したり引いたりする。
でもこれって経営者にとって大切なことじゃない?」と笑う。
2014.8.13