2014/12/13

和田康宏の「転ばぬ先の知恵」Vol.13

運送会社専門のコンサルタントとして活躍する「あいち経営コンサルタント」の和田康宏氏。コンサルタント実績は300社を超え、多くの社長・ドライバー・管理職と接してきたその実績はどんなコンサルタントよりも中身が濃いと評判だ

 

「『堪え難きを耐え、忍び難きを忍び』ですね。」

先日、ある運送会社の社長さんとのお話の一節です。

入社6ヶ月のドライバーが突然会社に来なくなったと思ったら、労働組合系の団体が

会社に乗り込んできた、とのことです。

要するに「残業未払いを支払え!」との要求です。

よくあることですが、就業規則が形だけで、実際の賃金支払いの状況とかけ離れた

内容となっていたことが原因です。その弱みにつけ込まれたのです。

当該ドライバーは入社時からICレコーダーで社長や管理者の発言をひそかに録音しており、

労働法令違反の証拠作りを着々としていたのです。まさに確信犯。

そうはいっても、その事業者さんに労働法令違反があるのも事実です。

賃金規程を改定するのはなかなか手間のかかることです。

ドライバーさんへの説明、説得などがとても面倒なため敬遠され、放置されることが

運送業界では多いと思います。

その点を逆に悪用されるケースが最近は目立ちます。

やはり「就業規則」は労務トラブル軽減のために不可欠です。

労働基準監督署の臨検があって相談にいらっしゃる社長さんに、まずは「就業規則」の見直しを

社労士の先生に相談することからスタートして頂きます。

それが一段落してから、運行管理や安全管理体制の構築支援をさせて頂いております。

それくらい「就業規則(賃金規程を含めた)」は重要であり、優先すべき課題です。

運送会社には2大リスクがあります。

1つ目は、行政処分による営業停止。

2つ目は、残業未払い、不当解雇による金銭トラブル。

このリスクが会社経営を揺るがす大きな2大リスクです。

事故や監査が入った場合であれば、安全管理体制の構築を急ぐ必要があります。

そうでない場合には、まずは残業未払い、不当解雇を防止するための就業規則の見直しを急ぐべきです。

ドライバーの労働基準監督署への通報は今花盛りです。

「ドライバーを信用するな」とは言いませんが、「窮鼠猫を噛む」を忘れないことです。

余裕がなくなれば人間も、自分以外の他人に責任を転嫁することが多くなります。

ドライバーの責任転嫁の格好のターゲット。

それが運送会社の社長さんなのです。

社長さんは、人を信じて使いつつも、「人間とは弱いものだ」ということも冷静に見据えた労務トラブル

予防策を着実に講じておくことを忘れてはいけませんね。

 

2014.5.28


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