2014/12/12

和田康宏の「転ばぬ先の知恵」Vol.12

運送会社専門のコンサルタントとして活躍する「あいち経営コンサルタント」の和田康宏氏。コンサルタント実績は300社を超え、多くの社長・ドライバー・管理職と接してきたその実績はどんなコンサルタントよりも中身が濃いと評判だ

 

貨物自動車運送事業者は、乗務員の健康状態の把握に努め、疾病、疲労その他の理由により

安全な運転をし、又はその補助をすることができないおそれがある乗務員を事業用自動車に

乗務させてはならない。」

読者の皆さんは、この文章を読んでどう思われるでしょうか?

貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第6号の内容です。

非常に抽象的です。

運送会社として、どの程度までドライバーの健康状態を把握しなければならないのか。

また、どのような状態のドライバーを乗務させてはいけないのか。

今一つハッキリしません。

つい先日、国土交通省は「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」を改定しました。

注目すべき点は健康診断“実施後”の運送会社としての措置です。

まず、健康診断で「異常あり」の所見のあるドライバーです。

特に「要再検査」、「要精密検査」、「要治療」の所見のドライバーに対して、医師による診断や

面接指導を受診させ、医師の判断により必要に応じて、所見に応じた検査を受診させなければ

ならなくなりました。(義務)

更には、この結果を運送会社が把握し、医師からドライバーの乗務に係る意見を聴取することが

必要になりました。乗務に係る意見とは「乗務の可否」や「乗務の際の配慮事項」のことです。

一方、健康診断で「異常なし」のドライバーについてどうするのか?

これが今回の健康管理の大きな改正点です。

誤解を恐れずにいえば、これまでは健康診断で「異常なし」であれば、その後は点呼で簡単な

健康状態を確認する程度でよかったです。

それが今回の改正でどのようになったのでしょうか?

 

「自動車の運転に支障を及ぼすおそれのある一定の病気」。

この一定の病気の“外見上の前兆や自覚症状”による疾病の把握をすること。

今回、新たに義務づけられた内容です。

 

「一定の病気」の具体例をマニュアルには例示しています。

カッコ書きは具体的な症状の一例です。

 

1.脳疾患(しびれ、呂律がまわらない等)

2.心臓疾患(胸が痛い、のどの圧迫感等)

3.統合失調症(独り言、空笑い等)

4.てんかん(ひきつけ、ぼっとする等)

5.再発性の失神(めまい、ふらふら感等)

6.無自覚性の低血糖(空腹感、脱力感等)

7.そううつ病(急に口数が増える、泣き言を言う等)

8.重度の眠気の症状を呈する睡眠障害(夜中息が止まる、日中しばしば居眠りする等)

9.認知症(物忘れがひどい、不安感が強い等)

10.アルコール中毒(酒が切れるとイライラする、飲むと暴れる等)

 

運送会社としては上記1〜10の前兆や自覚症状を確認しなければなりません。

慢性的なのか、複数の症状がないか等を総合的に判断し、必要がある場合には健康診断で

「異常あり」のドライバーと同じ措置が必要になります。

今までノーマークだった「異常なし」のドライバー。

医師だけでなく、運送会社による健康チェックまで細かく要求される時代になりました。

 

2014.5.14


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