2014/12/03

和田康宏の「転ばぬ先の知恵」Vol.03

運送会社専門のコンサルタントとして活躍する「あいち経営コンサルタント」の和田康宏氏。コンサルタント実績は300社を超え、多くの社長・ドライバー・管理職と接してきたその実績はどんなコンサルタントよりも中身が濃いと評判だ

 

前回の続きです。

今回の監査方針・行政処分の改正の本丸。

それは“悪質、重大な法令違反”を犯した運送会社に対する「30日間の営業停止処分」です。

 “悪質、重大な法令違反”とは具体的には次のとおりです。

1)運行管理者の不在

2)整備管理者の不在

3)全運転者に対して点呼未実施

4)監査の拒否、虚偽の陳述

5)名義貸し、事業の貸渡し

6)乗務時間基準の著しい違反

7)全ての車両の定期点検整備が未実施

 

今回は次の3点についてのお話です。

a.全運転者に対して点呼未実施。

b.運行管理者、整備管理者が未選任。

c.全ての車両の定期点検整備が未実施。

この3つのいずれかに該当し、国土交通省の監査で指摘された場合に、

30日間の営業停止になります。

一方、この3つの違反の疑いがあると適正化事業実施機関の巡回指導で判断された

場合に国土交通省へ「速報」されます。

この速報制度は本年10月1日からスタートしました。

今後、適正化事業実施機関の巡回指導を甘くみた運送会社が厳罰を受ける事例も出てくるでしょう。

とはいえ、賢明なる読者の皆さんは上記のような法令違反はしていないのではないでしょうか?

実はそれよりも注意すべきことがあります。

それは「記録の改ざん、不実記載」が疑われる場合です。

身に覚えのある方もいるかもしれない「記録の改ざんや不実記載」。

例えば点呼記録の不実記載。

深夜早朝に、実際は対面点呼を実施していないにもかかわらず実施したように記録を残すこと。

これは立派な「不実記載」です。

しかし、何のためらいもなく「対面点呼」と記録している方もいるのではないでしょうか?

この「記録の不実記載」と疑われる運送会社について、今後運輸支局とトラック協会で

設置する「定例会議で個別相談」をされるようになります。

疑いが強ければ「重点監査対象の事業者」として、国土交通省の「監査」が実施されます。

対面点呼の実施は点呼記録の体裁を整えればバレないだろう。

そう思っている社長さんもまだまだ多いようです。

しかし、いざ「記録の不実記載の疑い」をもたれれば、厳しい監査が行われます。

国土交通省の監査手法もかなり高度化しています。

点呼の不実記載を暴くために、どの書類とどの書類を突き合わせれば「法令違反」をあぶり

出すことができるか。さまざまな監査手法を駆使しながら国土交通省は監査に臨んできます。

内偵捜査もありうるのです。夜間、営業所に灯りがともされているか。

点呼者とドライバーが出入りしているか。場合によっては、国土交通省はこれからこの点の

調査についても重点監査事業者に対して力を入れてくるでしょう。

中途半端な「記録の改ざん、不実記載」は簡単に見破られます。見破った上での監査で

「本当に深夜早朝の対面点呼を実施していますか?」の質問に「やっている」と、やってもいないのに

「虚偽の陳述」をしたらどうなるか?

「30日間の営業停止」という、とてつもない大きな代償を払う結果となるのです。

「適正化事業実施機関の巡回指導をバカにしない」。

日々誠実に記録を作成することが大切な時代となりました。

 

2013.12.25


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